不安や苦しみを感じたら聞いてみよう

DREAMS COME TRUE
「ねぇ」
わかるよ
 その気持ち

名前 呼んでみる時の
心が 死んでいくような

引き裂かれるような 気持ち

わたしも通ってきたから
同じとこで つまずいて 泣いたから

ねえ、どのポケットも
思い出でいっぱいのその服に
あえて 手を通そうよ

もう一度 着てみたら
案外 似合わないことに
気づくかもしれない

だいじょうぶ

最悪の時は もう 過ぎているから


わかるよ 

悲しみが
人との 距離も広げる

時間が もしも味方なら
早く過ぎて欲しいのに

あのでかい肩にしがみついて
いちばん泣きたい時に いないから


ねえ、どのポケットも
思い出でいっぱいのその服を
今日は 脱いでみようよ

もしかして 思うより
案外 平気なことに
気づくかもしれない


だいじょうぶ

最悪の時は 
もう 過ぎているから

わたしも ほんとはまだよく
わからないけど きっと

傷ついていいの!!

それほどに 想える人と!!

そんな たったひとりと
出会えた証しだから♡


どのポケットも 
思い出でいっぱいの
その服に あえて 手を通そうよ!

どのポケットも あなたの愛が!!

いっしょに詰まってたことに 気づきなさい!

どのポケットも!

 思い出でいっぱいの!

その服を もう 脱いでみようよ!

どの思い出も あなたの愛と♡

いっしょだからだいじょうぶ

逝かせてあげなさい♡

かならず 

心から笑える日は
やって来るから



**************♪***

歌詞の説明

2010年の「ねぇ」は実は、吉田美和が内縁の夫を2007年に亡くし辛い経験を元に書かれた歌詞であることが分かります。
亡くなった彼の名を呼んでも、返事はなくやりきれない淋しさと辛さで心が引き裂かれそうになります。


わたしも通ってきたからと言えるのは、吉田美和の中で彼の死去がだんだんと過去になりつつあることを示しているよう。
同じ経験をした人と気持ちを分かち合いたいという感情移入が感じられるパート。
「ねぇ、どのポケットも
思い出でいっぱいのその服に
あえて 手を通そうよ
もう一度 着てみたら
案外 似合わないことに 
気づくかもしれない」


彼と一緒に出掛ける時は、とっておきの洋服を着ていきたいという女心は誰しもありますね。
彼が似合ってると褒めてくれたその服は、辛すぎて着ることができなかった。
でもあれから時が経って、思い出に浸ってもいいんじゃない?と着てみると、こんな感じだったかしら?とその服がもう似合わない自分がいることに気が付きます。

それは、彼との思い出も洋服も似合っていた自分も、全て過去になってしまったから。
彼が自分の生活から居なくなって、実は随分と時が経っているのかもしれない。
こうやって、過去にしがみついてたらいけないのかも?と気づかされる瞬間だったのではないでしょうか?

「だいじょうぶ
もう最悪の時は 過ぎているから」

彼や彼女、ご主人や奥様と死別された方がいらっしゃったら、この部分は痛いほど理解ができる歌詞なのだと、読みながら筆者も胸が熱くなります。
最愛の人を亡くしてしまって、しばらくは、何も手につかず途方に暮れる日々を繰り返してしまうでしょう。
でも最終的には、自分は生きて行かなくてはならない訳で、辛い気持ちと闘ううちに、いつかその痛みが薄れ、こうして最悪の時は過ぎたと思えるのでしょう。

’’人生は小説より奇なり’’という言葉がありますが、現実を受け止めなくてはならない酷な状況としか言いようがありません。



「わかるよ 悲しみが
人との 距離も広げる
時間がもしも味方なら 早く過ぎて欲しいのに
あのでかい肩にしがみついて
いちばん泣きたいときに いないから」

こんなつらい時、誰かに慰めてもらうとかえって辛くなるんですよ。
誰かと話をしたら、泣き崩れてボロボロになりそう。そんな思いが人から彼女を遠ざけます。
一番泣きたい時に、肝心の彼はいないんです。
その事実だけが彼女を苦しめます。

「ねぇ、どのポケットも 思い出でいっぱいのその服を
今日は 脱いでみようよ
もしかして 思うより
案外 平気なことに 気づくかもしれない」

ずっとふさぎ込んでいた彼女に前向きな感情が現れます。
思い出を失いたくないとしがみついていた気持ちを、どこか特別の場所にしまう時が来たのでは?
あの人無しでやっていけないと泣き続けた日々は、台風のように過ぎ去ったのかもしれない。
自分の気持ちを整理して、やっていけるかもしれない。と思い始めるのです。


「傷ついていいの
それほどに 想える人と
そんな たったひとりと
出会えた 証だから」


失ってから改めてわかる人の偉大さやすばらしさを彼女は実感しています。
辛いし、傷つくのは当たり前。それだけ彼が特別で唯一の人だったから。


「どのポケットも 思い出でいっぱいの
その服に あえて手を通そうよ
どのポケットも あなたの愛が
いっしょに詰まってたことに 気づきなさい
どのポケットも 思い出でいっぱいの
その服を もう 脱いでみようよ
どの思い出も あなたの愛と
いっしょだからだいじょうぶ 逝かせてあげなさい」


吉田美和と最終的に内縁の夫となった末田健さんとは2003年からの付き合いでした。既婚者だった末田さんとの交際は、人気絶好調のドリカムのイメージを覆すニュースとなりました。
2004年に離婚が成立した末田さんと晴れて一緒になりますが、結婚はせず内縁の夫と言う形で事実婚を続けた二人でした。

末田健さんは映像デレクターとしてドリカムはもちろんのこと、多くのミュージシャンのPVを手掛けてきた監督。
2007年3月胚細胞腫瘍が発覚し、様態が悪化した末田さんは同年8月に緊急入院することになります。
この時吉田美和はツアーの真っただ中で、ツアーを中止する予定だったそうです。しかし夫の「楽しみにしてるよ」の言葉に背中を押され、ツアーを決行しました。
末田さんは2007年9月23日、ツアーが終了した3日後に吉田美和付き添いのもと息を引き取るのでした。

死と隣り合わせになっても吉田を想う愛情が、ツアー中に迷惑をかけたくないと末田健さんを頑張らせたに違いありません。
歌詞にある’’愛情が詰まったポケットに気づきなさい’’というくだりは、この実体験を元に書かれているのだと思います。

最後に、吉田美和本人が登場するMVをご紹介します。
朝焼けの中を車に乗った吉田美和が、ピアノの静かな伴奏で歌い始めます。
景色は移り、郊外のハウススタジオのシーンへ。ミュージシャンたちがレコーディングをする賑やかで活気のある風景が映し出されます。
後半は、ミュージシャン全員でのコーラスになり、音楽がまるで「あなたは一人じゃないよ」と大きく包み込んでくれるよう。

曲の最後に呟くように「心から笑える日が必ずやってくる」と締めくくられています。
この「ねぇ」のタイトルはきっと吉田美和が夫末田さんにいつも呼び掛けていた言葉なのでしょう。
2010年末田さんの死から3年経って、吉田美和の気持ちが少しだけ癒えて来たことを象徴するような楽曲でした。

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